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ラヴェル「ボレロ」 メロディについて

      2017/12/06

ボレロの主題、メロディが普通じゃないと思うのだけど、あまり突っ込む人がいない。

ラベル作曲のボレロ。人気ありますよね。僕も好きです。大体15分ぐらい同じメロディの繰り返しが続く曲ですが、何度でも聴ける不思議な曲です。

楽曲解説はたくさんあると思うのだけど、僕はパートB、つまりいわゆるBメロについて 「すごく不思議な感じ」 がする。

というのは、あきらかに調からはずれた音なのに、妙な緊張感をもって、最終的に中心音に戻って安定しているから。

普通の聴感覚においては、「おそらく誰でもハズレを意識するであろう音使い」 のはずが、作品初演時から現在においてまで支持されるというのは、何か理由がある。

作曲者ラベル本人が、この曲の一般に対するウケを見て大変驚いたらしいです。それは裏返せば、「一般にはおそらく理解してもらえない」と本人は思っていたのでしょう。なぜか?

まず、曲構成が普通ではない。延々と繰り返すメロディを誰がずっと聴きたいと思うか? それに特にBメロが不協和音になる箇所があること。いわゆる禁じ手である平行5度で移動するハーモニーがあるから。これはどうやら多調というか複調というか、調性の違うものを意図して重ねているらしい。

だからウケないと思っていた。今書いた理由は僕の勝手な想像だけど。

ボレロ 主題分析

僕が気になるのは、Bメロの部分。構成やオーケストレーションなどの楽器編成については、ほとんど知識もないし、分からないのでパスするとして、特にBメロについて検索しても僕が望むような回答が見つけられなかったので、自分なりに書いてみようと思います。

ボレロはハ長調です。だから主音はC。ドミソですね。ドミソ。だれでも分かるドミソ。しつこいけどだれでもピアノの白鍵で押さえるアレです。これが転調しないでずっとバックに流れます。いや、ちょっと違うか。

正しくは、トニックとドミナントの繰り返しといった方が良い。CとG7が延々と続く感じ。

まずAメロはモードでいうとイオニアン。単純なドレミファソラシドです。Aメロはすべて白鍵で、オルタード、変化させてる音はない。

ただメロディの動きはちょっと違っています。構成としては2部構成。前半と後半に分けられます。

基本的な見方、考え方としては 音価 を使います。つまり音としての価値です。強調されている音をサウンドの要とみる。すなわち、長い、強い、解決を感じさせる音 というのをそのサウンドを構成する核とみなします。

こういう観点から聴いてみると、単純なイオニアンモードのなかにおいても、「コードサウンドが変化している」 というのが見えてきます。

以下はAメロ部分。枠内の矢印が強調されてる音。左のアルファベットは一応コード名。編集の都合上、上手く表記できていません。正しくは C△、Dm△ かな。

Aメロ分析

 

後半のDm部分は、おそらくジャズでいうところの ドミナントモーション みたいな感じがします。いわゆる ⅡⅤ で Ⅰ に解決というやつ。ドミナントモーションといってもジャズのように裏コードを使ってひねりを加えているわけではありませんけどね。

モードという概念とは少し違いがありますが、いわゆるコードスケールで考えると、前半部分はCイオニアン、後半はDドリアン、最後にGミクソリディアンを経由してCトニック音に解決するという主題です。

ドリアン部分に関しては、解釈の余地が他にあります。例えばCに対する完全4度であるFを強調したサウンドとして、Gsus4 とか、Dマイナーの代理コードして F とかね。後半全体としてはサブドミナントとドミナントを行き来しているような感じ。ディグリーでいうと Ⅱ-Ⅴ の繰り返しみたいな。

さて、本題のBメロについてはまた追記します。

フラメンコ風 Bメロ ボレロ主題分析

まず楽譜でメロディを確認します。

borero B

 

あ、その前に楽譜の音部記号に注意。僕も不慣れなのでちょっとアレなんですけど、C音 の位置が通常のト音記号のDの位置になっているので読み替えてください。

初っ端の出だしはパッと見、Cフラットになってますが、Bフラットですからね。楽譜の借用元は以下です。

http://www.shinsuke.com/blog/2008/07/04/ravel-bolero/

それと音部記号については以下を参照。

http://xn--i6q789c.com/gakuten/gosen.html

まずフレーズの構成から。

後半も大雑把には2部に分かれます。さらに細分化すると4つになります。前半二つと、後半も二つといった感じ。

1段目のフレーズ、ここはC7です。楽曲全体のなかでの機能としてはトニックなんですけど、響きとしてはドミナントですね。コードスケールはCミクソリディアン。

次の二つ目のフレーズでいきなり C♯ という フラット9 が強調されます。これはかなり緊張度の高い音。トニックCと半音でぶつかる鋭い音ですね。ジャズでいうところの オルタードテンション です。

さて、次はサウンドとしてはトニックCに対するドミナントGとなります。3個目のフレーズですね。このフレーズの終わりから4個目のフレーズとして平行5度でトニックに向けて下降していきます。

この3個目から終わりにかけての箇所、僕的にはもうフラメンコ風です。というかスペイン風で間違いない。Cフィリジアンです。

じつは ここ・・・フリジアン と言い切っていますけど、問題はそう簡単じゃないです。解釈と言いますか考え方によってはもっと広げる必要があるかも。

スケールについての解説、考え方は以下のページが参考になりますね。ボレロそのものじゃなくフラメンコについての解説です。

http://sisyphe.blog90.fc2.com/blog-entry-170.html

んで、不協和音 に聴こえる原因としては、やっぱり多調というのは正解かな。ポリモードというかポリコードというのか。 Cをドミナントとすると正規の主音はFであるし、Cを 「ミの旋法」つまり フリジアン と捉えると主音は G♯ となるから。

ただ不協和と言っても、そこがまた良いわけで、決して不快なサウンドではありません。全体として聴けば 緊張感があってとても良く聴こえます。じゃなきゃこんなに人気出ませんし。

ちなみに平行和音ってロックじゃ当たり前のようにあります。エレキをバレーして同じコードフォームでずらすようなリフなんていくらでもありますからね。いわゆる5度による重音、パワーコードとか言いますけどね。

なぜか僕はこのBメロについて考えていた時、レッドツェぺリンのカシミールのサウンドを思い出してしまいました。なんでかな?

Cオルタードとして見る

追記です。書こうと思っていたけど書き忘れた。

Bメロ後半部はCを基調としてみると オルタードスケール のように見えるし、聴こえる。♭6、♯11、m3、♭2、とか、まんまオルタードだ。

作曲は 1928年 、この当時はドミナントのオルタードについてどのように理解されていたのか?

今でこそ当たり前のように扱われるオルタードだけど、現在の耳でも聴く人によっては 「かなり奇妙に聴こえる」 と感じます。僕が奇妙に感じたのは(響きではなくて)、楽曲解説に 「オルタード」 とか、メロディックマイナーについて一切言及がないということ。

もしかしたらそういう観点から解説しているものがあるのかも知れないけど、ちょっと分からなかった。あるのはスペイン風メロディのフリジアンモードということと、もうひとつはポリトーナル(複調からの観点)のふたつ。

オルタードスケールの原点がどこにあるのかは残念ながら僕の知識では分からないのだけれども、確かに後半部分、下降していく雰囲気はオルタードを感じさせます。

主調である C はトニックでもあり、またドミナントコードでもあるという不思議。なんか解釈間違っているのかも。もしかしてブルース的な考えなのかもしれません。(ブルースは理論的というよりも、おそらくは感覚的な、音に対する嗅覚みたいな感じ)

一般的なジャズブルースでは完全4度上にいく時に、トニックがⅤ7(ドリアンを経由して)ツーファイブになりますからね。そういう感じで後半パート全体を仮トニックのドミナントと見立ててメロディを作ったか?

いや、C音への落ち着き感からすると、やっぱりスペイン風フリジアン説、平行移動の方がしっくりきますね。ロック的に考えると、C音を持続音(通奏音として)鳴らしながら、その間をパワーコードが平行移動していく感じかな?

ギター弾きなら誰でもやることがあると思うけど、たとえば 6弦 E音 を響かせながら4弦、5弦で5度音程を保持したまま適当に動かして 「響きの奇妙さ」 を感じてみるとかね。あるいは3弦、4弦とか。

こういった感覚が上で触れたレッドツェッペリンのギタリスト、ジミーペイジにはあると思うわけ。だから唐突にカシミールとか出てきたんだな。

こういった感覚は彼のギタープレイ全体にあって、それが魅力になってるんじゃないかと僕は強く感じます。

ちょっと話がズレてしまいましたが、トニックに解決する流れというのはブルースにしろフラメンコにしろ本質的には同じです。そういうわけで、大きく捉えれば 「不安定から安定へ」 というドミナントモーションという枠内でこれらの音使いというのは理解できるんじゃないかと思います。

 

 

 

 - 音楽とギター, 音楽理論