シンプルなピアノ曲がなぜこんなに心に響くのか?
グレン・グールド というピアニストがいます。大変有名なのであらためて紹介する必要もないでしょう。
紹介する曲は バッハ ゴールドベルク変奏曲 です。その中でも1曲目のテーマといえる曲。この曲は変奏曲の最初と最後で現れるものです。
ギターで演奏しているヴァージョンもいろいろありますけど、ピアノを選んでみました。貼り付けた動画では若い時と歳を重ねてからの演奏の比較となっています。まずは聴いてみましょう。
1曲目と2曲目はまったく同じです。とても有名なメロディですね。おそらく聴きやすいのは最初の若いころのものではないかと思います。
しかしやはり味のあるのは後者じゃないかと感じますね。まずテンポが全然違う。どうして歳を重ねたものが異様にテンポが遅くなったのかは分かりませんが、明らかに違いを感じ取れるんじゃないかと思います。
ちなみに色々な方の演奏も聴いてみたのですが、やはり異様にテンポが遅くて、いまにも止まりそうでコケそうな感じのする演奏が多い。
最初は 「なんでこんな聴きとりにくい演奏をするんだろうか?」 と感じていたのですが、じっくり聴き込むと理由が分かるような気がします。
僕の勝手な思い込みだろうけど、たとえば歌を歌うときに、「意図的にテンポ無視して後ろにずれこんで歌う」 という手法というかやり方があります。僕はあまり好きじゃないのですが、感覚的にそれと似ているのかなぁ・・という感じです。
コード進行にメロディが乗っかっている感覚とは違う
さて、パッと聴くと明らかにコード感はあります。しかしこの曲は 「左手が伴奏、右手がメロディ」という曲じゃないです。対位法といって上声と下声が分かれている。
現代曲やコードネームシステムに慣れきってしまった耳には「分離しているようには聴こえない」かもしれません。コードの分散和音 アルペジオを低い方で弾いているだけじゃないかと。でも明らかに上下にラインがあって、それが美しい構造を作っている。個人的にはエンディングに近い部分のベースラインが特に好きです。
さて、あなたはどっちの演奏が好きですか? 僕は歳を重ねてからの演奏が好きになりました。あまり想いを入れ込んで演奏するのは好きじゃないのだけれど、これは聴き込むと後者の方がいいです。1981年の方ね。なぜだろう?
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