黒毛和牛の値段 適正価格ってあるの?

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結論 適正価格はあります。ただしそれは原料の仕入れ価格とその売価設定によって変わります。

まず牛肉の仕入れ価格と一般的な商品の仕入れ価格との違いを理解する必要があります。洋服や家電、それに雑貨などといった右から左へモノを流すような商売とは基本的に異なります。

牛肉は原料が均一の品質ではありません。考えてみれば分かりますが、部位によってまったく肉の付き方が違いますし、肉質もそれぞれで違いがあり、用途が限られてくる部位もあります。牛一頭丸ごとでナンボという考え方をしますので、それを部位ごとに按分する必要があります。

枝肉

黒毛和牛 値段の仕組み 「按分」

まず、半頭買い という買い方を基準に説明します。半頭 というのは一頭の半分という意味で、文字通り一頭を縦半分にバッサリと切り落とした状態の枝肉を指します。

これが牛肉の流通の基本形です。骨付き枝肉ですね。自社でこれを捌ける設備のあるところはこの状態で入荷する。そして自社で小分けして特別なスペックをつくり、長期保存できる処理を施します。しかし小さな小売店などは手間をかけることを嫌ったり、そもそもこういった脱骨(骨を抜く作業)の技術を持っていない、あるいは保存用の真空包装設備などがないところもあるので、二次加工所などでボックスミートとして加工してもらい、それを入荷します。

この時の仕入れ価格はその時の相場や、商品そのものの価値でかなり変動があります。したがって売る方は原価計算をこまめに行う必要が出てきます。ここで出てくるのが 按分 という考え方です。

牛肉の按分のやり方

枝肉のパーツの分け方というのは基本的に大きく変わることはなく、ほぼ全国統一の基準があります。地域によって若干差異はあるのですが、ほぼ同じと言って差支えはありません。

一般的なカットをした場合、それぞれのパーツの重量というのは大体において決まってきます。たとえば、肩ロースはこれぐらい、本ロースとフィレでこれぐらい、ばら肉全体でこれぐらいといった調子です。個体差は当然あって、それは品種によっても顕著に現れます。黒毛和牛は大体においてロース部分の重量が大きく、美味しい部分が比較的たくさん獲れます。

これを比率として大体の平均値を統計から出します。

単純に重量比でそれぞれのパーツ価格に按分した場合、ちょっとおかしなことが出てきます。それはどう考えて工夫しても原価以上で売れないパーツが出てくるということです。

具体例を挙げますと、ばら肉などが相当します。それはなぜか?

まず余分な脂肪がとても多くて、十分にトリミングをしないと商品にならなないという事情があります。あと筋だらけで非常に硬い部位、たとえばネック(首回り)とかスネ肉 というのも単純按分による原価設定ではとても商売になるようなものではないです。

こういった事情を解決するためにはパーツごとに単価を調整しなければなりません。つまり 高く売れる部位は高く、使えない部位は安くする ということです。

この考え方は、大雑把に分けられた各パーツにおいても同様で、細かくカットして用途別に原価を計算しています。

一般的な考え方においては、こういった使えない部位、商品価値に対して原価が異様に高い(釣り合わないという意味)場合、そのマイナス分を高級部位に転嫁していきます。だから黒毛和牛のロースなどは高くなるのです。

安い物を何倍にもして売っているのではなくて、必然的にそうならざるを得ない事情があるのです。

 

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ちなみに上のアマゾンリンクの価格、まあこれ適正かなという感じです。「高い!」 って感じるだろうけど、イチボ っていう部位はわずかしか獲れない場所です。とても柔らかくておいしいとこ。

市場の実勢価格を参考に、パーツごとの原価計算をする。

原価計算をする際は、地域における牛肉の実勢価格を参考に考えます。なぜこういうことをするのか?

それは日本においては地域によって食文化の違いがあり、価格に対する認識や、人気、不人気 というものがあるからです。
例えば非常に大雑把ではあるけれど、東日本では豚肉文化、京都などの西日本では牛肉文化などと言われています。
これをもっとスケールを小さくして考えると、同じ県内においても地域によって売れ筋が違ってきます。
本来なら高く売れる部位でも、ほとんど需要がなければ安く売らざるを得ません。そのマイナス分を「よく売れる部位」などに「広く薄く価格転嫁」して、全体バランスを取ります。要するに利益率の調整といったことを行います。

ここが難しいところでもあります。

話を按分に戻しますと、こういった地域の実勢価格を参考にして、各パーツの原価を大雑把に振り分けていきます。こういう調整をしながら原価を決定します。

だから地域やお店によって、同じ品質の黒毛和牛でも価格に違いが出てきます。全国的な一般的な価格水準はもちろんあるのですが、上で述べた事情や、あるいはカットの方法などで細かい違いが出てきます。

肉好きの僕から見た黒毛和牛の価格

あくまで一般的な見地からですが、本物の黒毛和牛ならこれぐらいという価格の目安を書いてみます。肉質は A4 です。

サーロイン 100グラム 1500円

霜降りばら肉 上焼肉用 1000円

赤身もも肉スライス 900円

黒毛和牛 切り落とし 700円(バラ、すね、ネック は含まない)

肩ロース 1200円

こんな感じかな。もうちょっと高くてもいいと思いますね。最近の黒毛和牛相場は本当にひどい。高くなったという意味で。

 

 

上の商品なんか、もう原価ギリギリって感じですね。A5ランクでこの値段っていうのは本当に良心的。実際に送られてきたモノと写真イメージとのギャップっていうのは多少はあるだろうけど、価格設定としては適正です。

 

黒毛和牛の枝肉相場を見る限り、100グラム 500円 というのはあり得ないです。ほぼ骨を抜いた平均原価だからです。まるで儲けがありません。

安い物にはちゃんと理由がある。お買い得とまがい物の違いが分からないと騙されますよ。

じゃあどうやってお肉の価値を見極めればいいの?

お肉は値段が高ければいいってもんじゃないです。お値打ちか否か? 安物が悪いかといえばそうでもないし。

これは本当にむずかしいです。

ひと昔前は産地偽装とか不当表示とかわんさかありました。しかし今では検査が厳しく、農水省の出先機関である農政局職員が日常的に隠密、もしくは抜き打ちで調査しています。

ここでもし偽装や不当表示が発覚すると即制裁をくらいます。悪質さの度合いにもよりますが、不注意でない限りまず言い逃れはできません。販売されてるお肉を持ち帰って遺伝子検査もしますからね。

われわれ消費者としてはこういった検査で過去に問題のあったお店などを避けたりするしか方法がないような気もします。

やっぱり一番いいのは対面スタイルで買えるお店じゃないでしょうか。

なぜ対面なのかというと、値段の違いや肉質、部位などについて 経験のある職人 に直接聞くことができるからです。

一般的な判断基準で言いますと、まず 見栄えの良さ で購入を決める方がほとんどだと思います。確かにきれいに並べられ、発色もよいお肉は魅力的ですからね。

しかしそれが味や品質を担保する決め手ではないのです。

見栄えが良いものに対して高値を付ける肉屋もありますが、基本はやっぱり肉質です。

グレードが高くおいしい部位なのにあんまり見栄えがせず、結果比較的安い値段が付けられている・・これがお値打ち品です。
黒毛和牛というのは基本的に「発色」 がものすごく良いです。普通の交雑種と並べて比較すると明らかに違いが分かります。プロの目じゃなくてもはっきり分かります。
ところが部位の肉質によっては発色があまりよくない場合があるのですね。
上質な部位でグレードも高いのに発色が冴えない・・もしくは形がきれいに揃わない・・・とか。
こういう場合は無理して高値を付けずに「見切り品」「奉仕品」として比較的安く売る場合があります。

逆にグレードが低くとも見栄えだけで高く売られるものもあります。こういうのをつかむと 「見た目はいいがおいしくない」 といったことが起こります。

結局はそのお店の方針といいますか、販売スタンスによるところが大きいのかなと思います。

何回か通ってみて、「ここなら信頼できそうだ」 というお店や、常連さんが付いているお店を選べばまずハズレはないと思います。

一番いけないのはやっぱりスーパーなどのパック肉ですかね。これはもう完全に見栄えとラベル情報で判断するしかないですからね。まあ一度買ってみて当たりだったらそれもアリなんでしょうけど僕はやっぱり昔ながらの対面販売で買いたいです。

肉っていうのは真空パックから取り出して空気中の酸素に触れると発色を始めるのですが、同時に酸化も始まります。要は腐敗が進むわけです。

だからいつまでも新鮮なわけじゃなくって、新鮮さがイコール美味しさでもないんですよ。こういうところに 「あまりにも神経質」 になるとうまい肉を選び損ねるかもしれません。

 

 

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