デタラメを弾くわけがない。が、僕にはコードサウンドが聴きとれない。
この曲、third wind 有名です。結構コピーしている人も多いようで、動画でいろいろ見ることもできます。それに下のようなコピー譜もありますし、その気になればたぶん弾けるんじゃないかと。
実際に音を追っていくと、変わった特徴的な音形、パターンが繰り返し現れることに気が付くと思います。これはパットメセニーの指癖のようなものかもしれませんね。このスピードで滑らかに音をつなげるのには結構弾き込む必要がある。なぜなら単純にコードスケールをなぞるような動きだけで構成されているわけではないので。
これ、一応ソロの最後まで譜面は手に入ります。が、問題は冒頭の4小節、BREAK と書いてあって、コードについては何も書いてない箇所。赤枠のところです。
最初聴いたときは ドミナント系のサウンドに聴こえて、「なんか音を取りづらいのを弾いてるな・・」 といった感じでした。こういう感じのフレーズというかラインはパットメセニーにはよくあります。
案の定、半音間隔で音が変化していくところも多くて、僕みたいに絶対音感もなく、音を聴き分ける能力がそれほど優れているわけでもない身にとっては、通常のスピードでは絶対に音が採れないですね。半音、1フレットのズレた音ってのは速いスピードで聞き流すと 「特に違和感がなくなってしまう」
比較すると 「なんか違う」 というのは分かるんだけど、正確に言い当てられる人ってのは少ないんじゃないかと思います。というわけで、実際のサウンドは機械を使ってスピードを落として確認したいと思います。
ゆっくりとスピードを落として聴いても 「なにを弾いてるか よく分からん・・」 というのが正直なところ。僕としてはこのフレーズの根拠というか音楽的な理由を理解したい。
聴いてみて 「かっこいい!!」 とは感じるんだけど、なぜかっこよく聴こえるのか? どんな発想からこんなラインが生み出されるのか?
モヤモヤしますので、自分なりに分析らしきものをやってみたい。
曲の導入部として考える。ターンアラウンド
この4小節、バックサウンドが一切ありません。主調、キーであるFでいったんズバッと止まってこの4小節のBREAKが入り、再度バンドサウンドがギターソロと共にスタートします。
この時に、ギタープレイヤーの脳内において鳴っているバックのハーモニーというのは必ずあるはずです。それが一切ない状態でシングルラインのソロを弾いているとは考えづらいです。つまりパットメセニーは、この4小節をなんらかのガイドにしたがって単音でラインをつないで弾いているはず。
ガイド というのは、つまりはコード進行のことです。普通はシングルラインでこのような音の羅列を聴くとなんとなくコード感を感じるものなんですけど、この third wind pickup にはそれがない。というか希薄な感じがします。
まあ僕自身の耳が鈍感なのかもしれないが。
とにかく譜面と、実際のプレイのサウンドをよく聴き込んで、自分なりに消化というか 昇華 できたらいい。完全コピーがゴールではないですからね。こんなの ドヤ顔 されて弾かれても 「それで何?」 って感じです。 創造的じゃない。
チャーリーパーカーの有名なピックアップ
曲名がイマイチ思い出せないんだけど、チャーリーパーカーのサックスソロで有名なヤツが確かあったはず。その昔聴いてたんだけどな。あれ何ていう曲だったか。
パターンとしては third wind と一緒で、いったんバックサウンドが一切なくなってサックスだけで数小節ブレークが入り、楽曲のアドリブにそのままつながっていくというもの。
アイデアとしては昔からあって、べつに目新しくもなんともないです。おそらくパットメセニーもチャーリーパーカーについてはそれなりに勉強して通過というか消化してきているでしょうから、この有名な サックスブレイク についても良く知ってると思う。
まあジャズではテーマに沿ってアドリブをしていくんだけど、その最初の入りの 「つなぎ」 のところで、「ひっかけ」というか、すんなりテーマのフェイクにつながるようにアドリブを入れるってのが定番ですからね。
探せたら音源をアップしたい。
charlie parker famous alto break
この言葉で検索した結果、「チュニジアの夜」 がヒット。んーこれかな? 記憶が曖昧なんだけど、たぶんコレですね。イントロの次にテーマ、そしてまたイントロパターンが始まり・・・ブレイクを挟んでアドリブにつながるというパターン。
ま、チャーリーパーカーはどれを聴いても勉強になる。現在でさえも。バップの考え方というのが、コードサウンドに対して 「どんな音を選んでつなげていくのか?」 というところにあると思っていますので、そういう意味では音楽の本質というか、メロディとハーモニーの関係など、音楽の構造的な面を理解するのに役立つと感じます。
分析方法について
普通メロディが乗っかるコードってのは小節単位、もしくは拍ごとに変化していきます。ワンコードでずっと変化しないものもありますが、実際には違うコードプログレッションを想定しているケースも多い。
んで、この third wind 、結構な速さで16分音符のつながりが4小節続きます。聴いた感じである程度明確にコードサウンドの変化が聴きとれれば話は簡単なんですが、残念ながらその変化がイマイチ僕には聴きとれません。こういう場合はどうすればいいか?
1、繰り返し現れる音にポイントを合わせる。つまり楽句、フレーズのなかで繰り返し強調される音をサウンドの中心音とみなす。
2、中心音を見つけたら、それらをいくつか組み合わせて和音にしてみる。
要するに音価から重要音、特徴音を見出して無理やりコードを導くというやり方。4小節全部の音を低音から高音までずらっと並べて、重複している音を調べてみる。フレーズ中に短く弱く1回しか現れない音がサウンドの中心となることは絶対にないです。それらはおそらく経過音にすぎません。
問題はルート音の動き。想定されてる根音の動き、ルートモーションはいったいどうなってるのか? これが推測できないとコードサウンドが確定しません。コードサウンドというのは基音となるルートと上に乗っかる音とのインターバル関係で決まるので。
つまりこの4小節のフレーズにはそれに付随して動くベース音がある。
F+9 Fオーグメントナインス
この曲、イントロといいますか、まあ曲の始まりなんですけど、ベースがFでパターンをプレイしつつ、上に乗っかるコードサウンドが変化してます。(テーマが入るまでの繰り返し部分)これがどうもオーグメントの響きがします。
展開するとC♯のリディアンサウンドになる。またこのコード展開は色々考えられます。インバージョンというものだと思いますが、Gmフラット5、サブドミナントマイナーであるBフラットマイナーとか。
んで、謎の空白4小節のコードサウンドなんですが、どうも細かく考えるよりも、トニックに解決させるためのちょっと長いフレーズと考えた方がいいかもしれません。入りはズバッとトニック音で入るのだけど、いきなりドミナント系の変形フレーズをつないでトニックであるFに戻ると。
んで、どういう風に考えて弾いているか、フレーズを組み立てているかというと、先も述べたように、イントロで使われている オーグメントサウンド をインバージョン、つまり反転というか展開させつつ上手く音をつないでいるのではないか?
具体的にどの音がどのコードに対応しているのかは書けないけれども、ホールトーンやらディミニッシュが組み合わさったフレーズにように思えます。
ちなみに オルタードスケール というのがありますが、これは分解してみると、ディミニッシュとホールトーンの合成スケールのようにも見えます。いくつかの見方、考え方というのがありますが、単なるⅤ7に対するオルタードとして考えるだけよりも、このように複眼的に見ることによってより発展的な捉え方ができるようになる。
分析方法 2 拍に注目してみる。
音楽要素のなかの 拍、ビート というものに注目してみます。注意が必要なのは、アクセント とは意味が違うということです。
拍には強弱がありますが、これは アクセントが強いのが強拍ではない ということ。1小節がいくつのビートで構成されているかを表すもので、最小単位は 2 または 3 となります。あとはこれら二つのビートの組み合わせです。
四分の四 ですと、最初の1拍目が強、残りは弱となり、4拍のサイクルで1小節が構成される。それでコードサウンドが最小単位である1拍づつで変化すると仮定すると、机上の上ではベース音もサウンドに対応して1拍づつ動きます。
テンポ設定にかかわらず、1拍目には必ずそのコードの基音が鳴ってるはず。たとえ聴こえなくても(弾いていなくても)
メロディもこの大原則にならえば、強弱というものがあって、サウンドの骨にあたる音を強の部分に配置すると自然な感じに聴こえるようになる。アクセントは意味が違うのでしつこいけど勘違いしないように。
んで、このように考えてもう一回、third wind のソロブレイクを見てみます。
ブレイクの各小節の最初の1音を順番に抜き出すと A,G,B♭、F となる。フレーズの時間的変化を無視して、この4音だけを重ねてコードとして見ると Fメジャーに2度、4度がくっついた感じに見えます。(Fを基音としてみればの話だけど)テンションとしてみれば9度、11度です。ブレイクの入りに ジャン! とFメジャーのサウンドが鳴っているので全体としてみれば各ビートの1拍めの強拍部分はキーからは外れていないように見える。流れるサウンドそのものではなくて、譜面上だけど。
次に各小節の3拍めに注目します。理由は1拍めに次ぐ準強拍だから。登場順に F、G、E♭、F となり、F をルートとみなすと F7ナインスの響きです。これもまたルートを入れ替えると E♭9 の響きになる。
さて、これまで強拍となる1と3を見ました。では2と4の弱拍はどうなってるか? ここで音楽における強拍弱拍を クエスチョン&アンサー として見てみます。
問いかけと、その答えの連鎖
僕は音楽を「問いかけとその答え」のように見ることがある。これは大きく捉えれば Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ のようなコード進行であり、もっと細分化すれば、単音のつながり、つまりメロディの中にもそういう構造を見出すことができます。
いわばフラクタルのような構造で、一番大きい構造体は楽曲全体であり、それらが元の構造体の形を維持しながらいくつかのパートに分かれて、それらがまた同じような構造を保ちつつより細かいフレーズとなる。
最初の音は強で、どこにも行かない性質が強い。これが何かの動機でふらっと動く。この状態が弱で、なおかつ 問いかけの状態。んで、この ふらついた音 ってのがより安定したした位置に向かって落ち着くのが その答えの状態。これが1サイクルで、それらが連結していくイメージです。
AーF♯ーFー F | GーFーGーA
B♭ーD-D♯ーE | F-A♭ーFーG♯(A♭)
上は各小節一拍づつ先頭の音を抜き出した動き。んーこれなんだろ? 各小節それぞれコードは付けられるけれども・・・Fを主調としたイオニアンモードからは明らかにはずれる。とは言っても 強 の位置に F から見て ♭2 とか m3 といった音を置いているわけじゃない。
今度はもうちょっと範囲を広げて考えてみます。1小節が16分音符で構成されていますから、これを8ビートでみて 強に当たる音 を拾ってみます。1と2と3と4と・・・みたいに数えて1小節で全部で8個の音です。
AーBーF♯ーG♯-FーF♯ーF-G♯
G-F♯ーF-E♭ーG-B♭-A-G
B♭ーC♯ーD-B♭ーD♯ーBーE-C
F-G-A♭ーG♭ーF-C♯ーG♯ーG
と、こんな感じ。各音の裏(横棒の箇所)が弱拍となり、そこに譜面にある音が入ります。小節のつなぎも裏となり音が入る。が、ここでは強拍部分に相当する音だけでコードサウンドを考えます。
オクターブの入れ替えは自由にやってみて、どんな感じに聴こえるか 感触を味わってみます。
んー実際にやってみて感じたのは 「あまりピンとこない。。」 んで、テーマが終わってブレイクに入るまでの繰り返し部分、長く音を伸ばしている箇所のサウンドをよーく聴いてみる。
サウンドが変化しているのは分かっていたんだけど、ここを自分流にヴォイシングしてみます。理屈じゃなくて感覚で。
F7sus4ーF♯69-F+9ーF♯69
コードネームだけじゃ実際の響きの感覚をつかめないと思うのでサウンドなり映像を付けたいと思います。おそらくこのブレイクは単純なコードの繰り返しの部分を基に組み立てられている。ただ音使いが独特なのでほんとに 「捉えどころ」 がないです。
ある人曰く、「こんなのコピーしても意味がない」 というけれど、何の資料も参照せずに自力で分からないことについて考えることも必要なんじゃないか。
かなり時間を費やしましたが自分なりに答えが出せてよかった。間違ってるかも知れないのは自分でもよく分かってるからね。これで分析終了などとは思っていません。そんな浅いもんじゃないです。
問題は振り出しに。なぜこんなシングルノートラインを発想をした?
さて、自分の感覚を頼りに一応シングルノートラインに対応するコードサウンドを当てはめてみることができました。
F7sus4ーF♯69-F+9ーF♯69
これですね。各コード1小節のパターンです。このサウンドの流れを聴いてあのブレイクのラインを発想するのは相当に難しい。というかコードサウンドとの関連性が理屈であれ感覚的に捉えようとしてもすごく遠く離れているように感じて、合っているのか、はずれているのか?さえ分からないという感じです。
僕の感じ方としては、FのM3である A、F♯のナインスである A♭、Fのナインス G の3音が下降してまた上昇する動きと、合わせてベース音が F、F♯ というように半音で上昇下降する動きにこのブレイクラインのポイントがあるように感じます。
この4小節の動きは小節単位で単純化すると以下のように見ることができると思います。
Ⅰ-Ⅴ(♭Ⅱ)-Ⅳm-Ⅴ(♭Ⅱ)
分析方法 その3 コードサウンドに対しての音の取り方
ソロラインの分析には、定番の方法ではあるけれど、コードサウンドに対しての 1対1 のインターバルを確認していくという方法があります。
想定されるコードのルート音を ド(主音) と見立てて、そのメジャースケールから見て、ターゲットとなる音が 「♭か、もしくは♯するか」 というようなことを見ていく。本当に基本的なことなのだけれど、1度、3度、5度、7度、2度(9度)、4度(11度)、6度(13度)、以上7個がコードサウンドとなり、残り 5個 の音を入れると全部で12個の音がそろう。
んで、コードに対するメロディのインターバルを取ったあとは、「これはコードトーンである」とか、「これはアプローチだ」「ダブルクロマチックだ」などと分析していきます。
僕自身はそういう分析方法も意味のあるものだとは思うけど、なぜかイマイチ 「既存の枠(音楽理論)に無理やり当てはめて」 考えさせられているような気がしてしまって、「それが音楽を完璧に理解していることではないんじゃないの?」 というような思いがあるのですよ。
third wind のソロブレイクについて理解を深めるためには、今書いた分析方法もいいかもしれません。だけど僕は「それではおそらく理解できない」と感じる。つまり何が言いたいかというと、
音の取り方が分かっても、たぶん応用できない。パットメセニー風のギターを弾くことができるようになるだけだ。
応用っていうのは、直接的な音使いのことでもあるわけだけど、もう少し広く捉えれば、考え方ということになるかなと思う。僕自身は単なるリックというかフレーズを盗むというだけではなくて、発想の仕方そのものから、なにかアイデアなりひらめきみたいなものが得られればいいなと思うのです。
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