ラヴェル「ボレロ」 メロディについて

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ボレロの主題、メロディが普通じゃないと思うのだけど、あまり突っ込む人がいない。

ラベル作曲のボレロ。人気ありますよね。僕も好きです。大体15分ぐらい同じメロディの繰り返しが続く曲ですが、何度でも聴ける不思議な曲です。

【NHK交響楽団】ボレロ【Joseph Maurice Ravel】

楽曲解説はたくさんあると思うのだけど、僕はパートB、つまりいわゆるBメロについて 「すごく不思議な感じ」 がする。

というのは、あきらかに調からはずれた音なのに、妙な緊張感をもって、最終的に中心音に戻って安定しているから。

普通の聴感覚においては、「おそらく誰でもハズレを意識するであろう音使い」 のはずが、作品初演時から現在においてまで支持されるというのは、何か理由がある。

作曲者ラベル本人が、この曲の一般に対するウケを見て大変驚いたらしいです。それは裏返せば、「一般にはおそらく理解してもらえない」と本人は思っていたのでしょう。なぜか?

まず、曲構成が普通ではない。延々と繰り返すメロディを誰がずっと聴きたいと思うか? それに特にBメロが不協和音になる箇所があること。いわゆる禁じ手である平行5度で移動するハーモニーがあるから。これはどうやら多調というか複調というか、調性の違うものを意図して重ねているらしい。

だからウケないと思っていた。今書いた理由は僕の勝手な想像だけど。

ボレロ 主題分析

僕が気になるのは、Bメロの部分。構成やオーケストレーションなどの楽器編成については、ほとんど知識もないし、分からないのでパスするとして、特にBメロについて検索しても僕が望むような回答が見つけられなかったので、自分なりに書いてみようと思います。

ボレロはハ長調です。だから主音はC。ドミソですね。ドミソ。だれでも分かるドミソ。しつこいけどだれでもピアノの白鍵で押さえるアレです。これが転調しないでずっとバックに流れます。いや、ちょっと違うか。

正しくは、トニックとドミナントの繰り返しといった方が良い。CとG7が延々と続く感じ。

まずAメロはモードでいうとイオニアン。単純なドレミファソラシドです。Aメロはすべて白鍵で、オルタード、変化させてる音はない。

ただメロディの動きはちょっと違っています。構成としては2部構成。前半と後半に分けられます。

メロディを分析する際の基本的な見方、考え方としては 音価 を使います。つまり音としての価値です。強調されている音をサウンドの要とみる。すなわち、長い、強い、解決を感じさせる音 というのをそのサウンドを構成する核とみなします。

こういう観点から聴いてみると、単純なイオニアンモードのなかにおいても、「コードサウンドが変化している」 というのが見えてきます。

以下はAメロ部分。枠内の矢印が強調されてる音。左のアルファベットは一応コード名。編集の都合上、上手く表記できていません。正しくは C△、Dm△ かな。

Aメロ分析

 

後半のDm部分は、おそらくジャズでいうところの ドミナントモーション みたいな感じがします。いわゆる ⅡⅤ で Ⅰ に解決というやつ。ドミナントモーションといってもジャズのように裏コードを使ってひねりを加えているわけではありませんけどね。

モードという概念とは少し違いがありますが、いわゆるコードスケールで考えると、前半部分はCイオニアン、後半はDドリアン、最後にGミクソリディアンを経由してCトニック音に解決するという主題です。

ドリアン部分に関しては、解釈の余地が他にあります。例えばCに対する完全4度であるFを強調したサウンドとして、Gsus4 とか、Dマイナーの代理コードして F とかね。後半全体としてはサブドミナントとドミナントを行き来しているような感じ。ディグリーでいうと Ⅱ-Ⅴ の繰り返しみたいな。

さて、本題のBメロについてはまた追記します。

フラメンコ風 Bメロ ボレロ主題分析

まず楽譜でメロディを確認します。

borero B

 

あ、その前に楽譜の音部記号に注意。僕も不慣れなのでちょっとアレなんですけど、C音 の位置が通常のト音記号のDの位置になっているので読み替えてください。

初っ端の出だしはパッと見、Cフラットになってますが、Bフラットですからね。楽譜の借用元は以下です。

ラヴェル『ボレロ』

それと音部記号については以下を参照。

楽典:五線と音部記号

まずフレーズの構成から。

後半も大雑把には2部に分かれます。さらに細分化すると4つになります。前半二つと、後半も二つといった感じ。

1段目のフレーズ、ここはC7です。楽曲全体のなかでの機能としてはトニックなんですけど、響きとしてはドミナントですね。コードスケールはCミクソリディアン。

次の二つ目のフレーズでいきなり C♯ という フラット9 が強調されます。これはかなり緊張度の高い音。トニックCと半音でぶつかる鋭い音ですね。ジャズでいうところの オルタードテンション です。

さて、次はサウンドとしてはトニックCに対するドミナントGとなります。3個目のフレーズですね。このフレーズの終わりから4個目のフレーズとして平行5度でトニックに向けて下降していきます。

この3個目から終わりにかけての箇所、僕的にはもうフラメンコ風です。というかスペイン風で間違いない。Cフィリジアンです。

じつは ここ・・・フリジアン と言い切っていますけど、問題はそう簡単じゃないです。解釈と言いますか考え方によってはもっと広げる必要があるかも。

スケールについての解説、考え方は以下のページが参考になりますね。ボレロそのものじゃなくフラメンコについての解説です。

La creation absurde ~ 不条理な創造 フラメンコのコード・スケール理論【基礎編】

んで、不協和音 に聴こえる原因としては、やっぱり多調というのは正解かな。ポリモードというかポリコードというのか。 Cをドミナントとすると正規の主音はFであるし、Cを 「ミの旋法」つまり フリジアン と捉えると主音は G♯ となるから。

ただ不協和と言っても、そこがまた良いわけで、決して不快なサウンドではありません。全体として聴けば 緊張感があってとても良く聴こえます。じゃなきゃこんなに人気出ませんし。

ちなみに平行和音ってロックじゃ当たり前のようにあります。エレキをバレーして同じコードフォームでずらすようなリフなんていくらでもありますからね。いわゆる5度による重音、パワーコードとか言いますけどね。

なぜか僕はこのBメロについて考えていた時、レッドツェぺリンのカシミールのサウンドを思い出してしまいました。なんでかな?

Cオルタードとして見る

追記です。書こうと思っていたけど書き忘れた。

Bメロ後半部はCを基調としてみると オルタードスケール のように見えるし、聴こえる。♭6、♯11、m3、♭2、とか、まんまオルタードだ。

作曲は 1928年 、この当時はドミナントのオルタードについてどのように理解されていたのか?

今でこそ当たり前のように扱われるオルタードだけど、現在の耳でも聴く人によっては 「かなり奇妙に聴こえる」 と感じます。僕が奇妙に感じたのは(響きではなくて)、楽曲解説に 「オルタード」 とか、メロディックマイナーについて一切言及がないということ。

もしかしたらそういう観点から解説しているものがあるのかも知れないけど、ちょっと分からなかった。あるのはスペイン風メロディのフリジアンモードということと、もうひとつはポリトーナル(複調からの観点)のふたつ。

オルタードスケールの原点がどこにあるのかは残念ながら僕の知識では分からないのだけれども、確かに後半部分、下降していく雰囲気はオルタードを感じさせます。

主調である C はトニックでもあり、またドミナントコードでもあるという不思議。なんか解釈間違っているのかも。もしかしてブルース的な考えなのかもしれません。(ブルースは理論的というよりも、おそらくは感覚的な、音に対する嗅覚みたいな感じ)

一般的なジャズブルースでは完全4度上にいく時に、トニックがⅤ7(ドリアンを経由して)ツーファイブになりますからね。そういう感じで後半パート全体を仮トニックである  F  のドミナントと見立ててメロディを作ったか?

いや、C音への落ち着き感からすると、やっぱりスペイン風フリジアン説、平行移動の方がしっくりきますね。ロック的に考えると、C音を持続音(通奏音として)鳴らしながら、その間をパワーコードが平行移動していく感じかな?

ギター弾きなら誰でもやることがあると思うけど、たとえば 6弦 E音 を響かせながら4弦、5弦で5度音程を保持したまま適当に動かして 「響きの奇妙さ」 を感じてみるとかね。あるいは3弦、4弦とか。

こういった感覚が上で触れたレッドツェッペリンのギタリスト、ジミーペイジにはあると思うわけ。だから唐突にカシミールとか出てきたんだな。

こういった感覚は彼のギタープレイ全体にあって、それが魅力になってるんじゃないかと僕は強く感じます。

ちょっと話がズレてしまいましたが、トニックに解決する流れというのはブルースにしろフラメンコにしろ本質的には同じです。そういうわけで、大きく捉えれば 「不安定から安定へ」 というドミナントモーションという枠内でこれらの音使いというのは理解できるんじゃないかと思います。

バッキングサウンドがどうも変だ・・・単純な Cトライアド じゃない!

このボレロ、曲の最初からよく聴いてみるとAメロのバックで鳴っている和音がどうも濁って聴こえる箇所があります。

たぶんチェロ? いやヴァイオリンかな? 弦を指ではじいているような音。「濁り」というと表現も変なのですが、僕にはやや濁って聴こえる。

ギターで再現してみると、なんと 長2度の音 を重ねているんですね。

ちなみに大正時代の実験で筝曲者に長二度の重音を聴かせたところ、非常に澄んだ音がすると答えた人がほとんどだったらしい。

上記のことは、以前になにかの文献で読んだ記憶があるのだけれども残念ながら出典元が分からない。。もしかして↓ だったか。。

坂本龍一が音楽について語っている本

僕の推測では、おそらく邦楽の古典ではペンタトニックの展開系を使うことがほとんどなので、5音音階に調律されてるお琴では、長2度での残響音を常に耳にしていたからだと思われます。

さて、ボレロですが、基本的な音の流れは C→E→G です。が、Gの5度である D音 を EとCに重ねているように聴こえる。

ジャズでいうところのテンションノートでは9thとして扱う音ですが、これを2度として和音として扱っています。

「なんか不思議な音だな」 と気にはなっていましたが、作曲当時にはすでに普通の用例だったのか僕の知識ではよくわかりません。

ボレロの用例とはちょっと違うと思いますが、※9thを長2度の和音として扱う例として、ドリームシアターのジョンペトルーチのギターリフを参考音源として挙げておきましょう。

※ 正しくは 完全5度重ね といった方がいいかも

個人的には、このサウンド かなり好きです。

左手のストレッチがちょっときついですけど、独特の響きになるのがよくわかる。

追記 ボレロのBメロの不思議さについて

最近のことですが、たぶん高校生の方からだと思いますがコメントをいただきました。

その中で、スケールについて質問があったのですね。その内容は・・・

「あくまで譜面を見て判断するとして、Bメロはフレーズ別に分解して考えると F を基調とした各種スケールを用いている」

※ 詳しくはコメント欄をチェックしてください。

「この理解は音楽理論的に正しいのか、どうなんだ?」

ってゆー質問ですね。「はて、なんて答えればいいんだろ?」というわけで、僕なりの考えをもう一度整理してみようと思います。

ボレロ Bメロに関する分析記事はない?

まずですね・・そもそもボレロのBメロの不思議さに関して書かれている日本語記事ってゆーのが本当にないのか? ってことであらためて検索してみたんですよ(笑)

質問者に「おまえんとこのブログ記事しかねーぞ?」 って言われちゃったんだよねー(苦笑)

んー、これはどうやらハズレでもないみたいで、期待する解説ってゆうのがないわけでして。「だれか書いてー」 (笑)

本題に入る前に、どうやら質問者さんは、僕と同じように「Bメロはやはり変だ、どうしてああいう変な響きなんだ?」と感じたみたいです。

その原因を探るべくリサーチしていたらしい。

まずは「スケール」の定義をはっきりさせよう スケールとは?

僕なりの解釈とはなりますが、スケールとは・・・

コードトーン+テンションノート です。これを1オクターブ内に再配置したもの。

基音からのインターバル(度数)で言うと、1,3,5,7、9、11、13 ですね。このうち、9,11、13 を、2、4、6 と読み替えてオクターブ内に再配置した音階がスケールの基本概念となります。

 

ちなみに、この並びはメジャースケール(ドレミファソラシ)を基本としており、そこからズレることで「すべての音程」を表現します。

 

標準的な音楽では、これらは12音と言われ、その並びは以下となります。

1(基音、ルート)、短2、長2、短3、長3、P4、増4、P5、短6、長6、短7、長7

つづく

じゃあ、今度は「コードってなに?」っていうと、これも コードトーン+テンションノート っていうことになります。

んで、結論を言うと、コードもスケールも同じ概念を表しているということになります。

 

ただ、違いは「表現の仕方」だけであり、どちらも響きを表すものだと言えます。

 

したがって 「Fメジャースケールでこのメロディは作られてる」と言われると、僕の場合はルートにFを持つ F△ か、これに類するコードを想像するわけです。

これを踏まえて実際のメロディを考えてみましょう。

はたして ボレロBメロの冒頭部分は Fメジャースケールで作られたメロディーなのか?

僕は Bメロの冒頭部分は Cミクソリディアン だと書きました。これは F を基音としてみて、その第5番めの音から始まるスケールです。

いわゆる F に対する正式なドミナントコードであり、コードスケール名としては ミクソリディアン で間違いないです。

なぜ Fメジャースケールではなくて、Cミクソリディアンとしたか?

コード機能やスケールからみて確かに主調は F となるのですが、モードといわれる概念には「色彩感」というものがあります。

この冒頭部分は、明らかにミクソリディアンのカラーを持っており、Fメジャーに属する音で成り立っていながら、独自のカラーを持っている。

だからこのメロディは Fメジャースケール ではないと考えるのが正解です。先にも書いたように、スケールはコードサウンド、コードカラーをそれぞれ持っているからです。

Fメジャースケールの持つコード感 と Cミクソリディアンの持つコード感、色彩感を比べてみて欲しい。

同じ調性圏に属するコードならば、その調性、キーのスケールを考えればいいと考えるかもしれません。しかし、それではコードサウンドの持つ色彩感を出せないのですよ。

いわゆる「コード感のないソロ」とかいわれるのが、そういう考え方からくるのです。

つづく(考え中)・・・

というわけで、フレーズから感じる「色彩感」をもとに、コードサウンドとそのスケールを考えます。

考え直したコードスケールは以下となります。

まずBメロ冒頭のフレーズ・・・これは Cミクソリディアン なぜなら 基音C に対してフラット7thの音を強調しているから。

つぎ2番目・・・これは Cハーモニックマイナー5thビロウスケール。コードサウンドは C7 のままです。仮トニックである Fマイナー に対するドミナントコードの響きです。

テンションを付けて C7♭9 としてもいいです。

以下、参考サイト

 

 

つぎ3番目のフレーズ・・・このフレーズの色彩、カラーは、おそらく Bフラットリディアン♭7スケールです。ちょっと悩んだけど (笑) 響きとしてはコレ以外には考え付かないw フレーズ全体から感じる響きは B♭7 ですね。

最後の下降していくフレーズ・・・コードサウンドを先に書くと、E♭→C♯→C と下降する音型です。サウンドカラーとしては E♭ミクソリディアン、C♯リディアン、んで Cフィリジアンもしくは Cハーモニックマイナー5thビロウ となりますね。

フラメンコ風によく見られる・・・っていうか、もろフラメンコ定番コード進行となっています。

↑ ここが 5度平行移動 といわれる部分だと思います。

以上を総合して考えると C7 というコードが、仮トニック F への「正規ドミナントの性格を持つ」と考えれば Fマイナー を基調と考えたメロディと言ってもよいと言えますが・・・やっぱりカラーが全然違うわけで。

んでもって、一般的な音楽理論を持ち出すと以下のようになるかと思います。

ボレロのBメロは モーダルチェンジ によって曲の雰囲気を変えている

詳しくは以下を参考に。

 

 

というわけで、とりあえず終わり ふぅ。。疲れた (笑)

あ、終わりに・・・作曲者である モーリスラヴェル が Bメロ をどう考えていたか? それは「わかりませーん」

僕が調べた限りでは 「聴衆を惑わす・・・幻惑させる」 というような目的があったらしい。ウソかホントか知らんけど (笑)

コメント

  1. ぽのとろ より:

    こんにちは。最近高校の音楽の授業でボレロを鑑賞してBメロの不思議な感じがする理由を調べようと思ったのですがこちらのサイトぐらいしか見つかりませんでした…。私はモード(旋法)の名前は知っているのですが私はBメロの4つのフレーズをそれぞれ
    Fメジャースケール
    Fハーモニックマイナースケール
    Fメロディックマイナースケール
    Fナチュラルマイナースケール
    と解釈しました。メロディーだけ見たのでこうなったのですが、この解釈は正確には正しくないのでしょうか?

  2. nice clew より:

    はじめまして。コメントありがと。

    「正確な解釈」・・これが何を意味するか? 

    あなたは音楽の理論的解釈に権威性を求めているのでしょうか?

    だとしたら僕の解説は失格ですよ(笑)

    「音楽には正解なんてない」というのが僕の考え。あなたなりの解釈があっていい。

    あなたが書いたように F を基準としてメロディを考えてもいいんです。

    ただ、「なぜ F なのか?」 「 C がキーなのになぜ F を基音に持つスケールを考えるのか?」

    こういうところを深堀してみて欲しい。

    発想がおもしろいので、僕も一緒に考えてみたいです。少し時間をください。考えがまとまったら、また本文に追記します。質問ありがとう。

     

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