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肉のおいしさと柔らかさ 柔らかい と おいしい の違いについて

      2016/02/06

たとえばテレビ番組。タレントたちがぞろぞろと街歩きをしています。ふと目に付いた飲食店で食事をするという場面。

目の前に運ばれてきた料理をまえに 「うわぁ~おいしそう」

一口食べて 「やわらか~い」

よくあるテレビのグルメリポートですね。ここで僕は気になりました。

お肉は 柔らかい と おいしい が同じなのか? 柔らかさをおいしいと感じているんだろうか?

牛肉の場合は 柔らかさ が評価されるのは本当である。ただし おいしさ の基準は 柔らかさ だけではない。

結論から言いますと、繊維が細くて適度な霜降りがあれば柔らかくておいしい牛肉だといえます。ただし脂肪の質が上等であることが条件です。

A5サーロイン

上の写真はネットで拾ってきたもの。マーブリングから察するに A4からA5クラスだと思われます。部位はサーロインです。ややサシが荒い印象がありますね。しかし柔らかさや味は良いと思います。トリミングも比較的きれいにされていると思います。

ですが、僕だったら背脂を 筋ごとトリミングしてしまうと思います。なぜなら食感を妨げると感じるからです。最高に美味い状態にする。その代わり、販売価格は少し上げますけどね。


 

牛肉は柔らかい部位ほど価格評価が高くなります。これは販売価格と一致します。販売者からみた牛肉の部位別価格の付け方について説明します。一般的な考え方は以下の通り。

まず ロイン系・・・フィレ サーロイン リブロース 肩ロース

これが一番高く評価されます。なぜなら柔らかくて味も良い部位だからです。そして筋肉繊維もほかの部位と比較すると細いです。つまり柔らかい。したがって価格設定も高いのです。

つぎに 赤身系・・・ ウデ モモ系

これら赤身系が中間のクラスになります。味も良くて柔らかさもありますが、ロイン系ほどはありません。しかし、さらに細かく分割することによって ロイン系といっても差し支えない部位は存在します。

3番目は バラ系 ・・ バラ系の評価が低いのは 原因が 柔らかさ にあるのではなくて、 その歩留まり からきています。したがって おなじバラ肉の中でも 柔らかい希少部位は高く評価されて価格も高く設定されます。

最後に すね肉 ネックなど・・これらの部位は 筋っぽく、本当に堅いので評価としては最低ランクとなります。

非常に大雑把ですが、どこのお肉屋さんでも だいたい同じような価格設定をしています。カット方法の工夫による違いはもちろんありますが、基本的にロース系のお肉の評価が、ほかの部位の評価を下回ることはまずありません。

価格の高い牛肉のほうが柔らかいのは ある意味 では本当です。

小見出しで ある意味 と書いたのは 歩留まり計算の都合上、価格を高くするケースがあるからです。

先に述べたようにロイン系 (ロース や フィレ など)は価格設定が高くなっているので、高い牛肉というのは当然柔らかさも兼ね備えています。

では高ければ高いほど柔らかいか? そして味も良いか?

一般的に言えば YES です。でも牛肉には格付けの最高ランクが決まっているので、無制限に上があるわけではありません。同じA5ランクで同じようなマーブリングの牛の場合でも価格は違ってきます。なぜなら牛の取引価格は競売で決まるからです。

みんなが欲しがる牛は高い値で競り落とされますし、人気がなければ場が流れてしまいます。競り市で評価される基準は、良い肉質であるかどうかが一番重視されるのですが、もうひとつ重要な視点があります。

それは ずばり 儲かる牛かどうか? です。全体的な歩留まり それから肉質の良さ もうひとつ・・各部位の重量比 これらを天秤にかけて判断します。つまり歩留まりが良くて、なおかつロイン系の重量比が全体に対して比較的大きい そして肉質も良い牛 は人気があります。これらの目利きには絶対的な格付け・・たとえばA5のような基準はありますが、最終的には経験と勘で判断することになります。

付け加えますと 遺伝的要素も加味されます。

遺伝的要素というのは血統のことですね。ちゃんとした黒毛和牛ブランドには 鼻紋 と呼ばれる牛の血統を証明する書類があります。人間でいう指紋と同じで一頭づつ違いがあります。そして親牛についての記録もちゃんと保存されて管理されています。

牛肉の本当のおいしさは その油 脂肪に秘密がある

Aランクで示される 和牛 と その他の牛 の決定的な違いは 脂肪の質にあります。マーブリング(脂肪交雑度合いを示す) いわゆる サシ や、霜降り具合では測れない要素が脂肪の質です。

この質感の違いは 手で触ってみるとよく分かります。

まず しっとり感。一番分かりやすいのは脂肪をナイフで切ってみること。もちろん冷えている時にです。これでボロボロと脂肪が割れないことが良い脂肪の条件です。きめの細かい脂肪は溶けだしていない時でもきれいに切ることができます。

ところで牛肉のすき焼きには 鉄製の鍋を使うのが一般的だと思います。こんなやつ。

すき焼きを始める前には必ず油をひきます。このときに 牛脂 ヘッド といいますが、それを鍋肌に回します。 このときに その白い脂肪を観察してみてください。

この脂肪が本物の和牛ですと しっとり感 があり、熱によって溶ける速度が速いのに気が付くと思います。といっても比較する脂肪がなければ分かりませんよね。。

安い牛肉をおいしく食べるための裏技として、この鍋肌に付ける油に和牛の脂肪を使うというものがあります。香り風味が増すのは間違いないです。

一般的に和牛の脂肪は きめが細かく、同じ室温でも溶けはじめる温度が低いので、すぐに ダラダラになります。いっぽう低品質の牛・・雑種などの脂肪は バサバサ感 があり、溶ける速度も遅いです。ただし和牛の脂肪も、空気に触れて乾燥してくるとバサバサになってくるのは同じです。

この しっとり感 は、一般に 融点の違い として表現されています。文字通り 溶けだす温度が雑種と比較して低い ということです。

もう一つの重要な違いは その成分です。

一番 味に関係しているのが 香り成分です。匂いですね。加熱したときの香ばしさのこと。これは脂肪によって決まります。

簡単にいいますと、和牛・・黒毛和牛には独特の風味を醸し出す匂い成分がある。これが味の違いとして認識されるわけです。この香り成分は牛の遺伝によるもので、餌のグレードによる変化ではありません。たとえばホルスタイン種の牛に穀物を主成分としたエサを与えれば 確かに良く肥えた牛 にはなります。

しかし、血統で管理された和牛と同じような香り成分を持たせることは不可能です。これは体質というものです。たとえば人間でいうと サプリメントをいくら摂取したところで我々が遺伝的に本来持っている体質を変えられないのと同じことなのです。

これから畜産技術が向上すれば 遺伝子レベル での人為的操作も可能になるでしょう。もうすでに取り組んでいるとみて間違いないです。

牛肉の持つ独特の香り成分についての詳しいレポートは以下の論文にあります。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk/59/3/59_127/_pdf

他にも検索すれば 牛肉の香り成分 についての記事はありますが、日本各地のブランド牛の宣伝ばっかりという感じの記事が多いです。

この記事では和牛と認定されている種(全部で4種類ある)のなかでも 黒毛和牛 について書かれていることに留意してください。

牛肉のおいしさについての まとめ と 豆知識

牛肉のおいしさは 柔らかさ だけではなくて、香り成分 も大きな役割を果たしています。その香りを司っているのが脂肪分です。お肉を買う時には この脂肪にも注目してみてください。

一般的に嫌われ者の脂肪ですが、使い方によっては非常においしく有効に使えます。

例えば ひき肉。比較的安いので料理にはよく使われますよね。身近な例だとハンバーグ。

一度試してみて欲しいのですが、安売りで買ってきたミンチ肉に和牛の脂肪を少し足してみてください。行きつけのお肉屋さんで頼めばタダでくれます。本物の和牛を使っていないとダメですからね。これを包丁で細かく砕いて安売りミンチとボールの中で混ぜるだけです。しばらく混ぜていると手の温度で溶けだして粘りが出てくるはずです。

混ぜる分量の目安は およそ10%ぐらいでいいと思います。入れすぎると油だらけになり、焼いたときに ものすごく目減りします。目減りした分はどうなるかというと フライパンに溶けだして油でいっぱいになり びちょびちょになります。

ついでに この溶けだした油を捨てずにソースとして利用します。これにウスターソースとケチャップを足して味を調えれば おいしいハンバーグソース になります。煮詰めすぎてちょっと濃くなってしまったら水で薄めればOKです。

和牛の脂肪を混ぜたハンバーグと、そうじゃないハンバーグ。どちらがより美味しく感じるか? 答えは聞くまでもないでしょう。

ちなみに和牛の脂肪は回収されて再利用されています。というか和牛に限らず食肉の廃棄物(おもに脂肪分のはなし)についてなんですが、けっこう謎な部分でもあります。これについては また記事にします。

 

 

 

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